
歴博(佐倉市の国立歴史民族博物館)で企画展示されている「日本建築は特異なのか」を見てきました。
絵画と違って建築そのものは展示できないため、木組みの模型やビデオなどの解説によって主に中国、韓国、日本のそれぞれ宮殿、寺院、住宅の違いを展示解説していました。その中でやはり興味深かったのが、日本の神社の外形的空間形式でした。やはりといいますのは、伊勢神宮に代表される神社建築こそ東アジアというより世界の中での際立った特異な形式を現す建築だと思うからです。
数学で言う「特異点」になりますかね。僕にはさっぱりわからないこの「特異点」の研究で、以前広中平祐先生は数学のノーベル賞とも言われるフィールズ賞を受賞しています。 さて、神社は本殿の内部に機能を持つことはなく、本殿の前扉も閉鎖しています。内部では儀礼を行うこともなく、神像もおおよそ存在しないといって良いのではないでしょうか。神像が存在したのなら、表扉は開扉して中の神像を見せたはずです。したがって神像は存在しないことになります。神像という図像の変わりに変化しない外形的空間形式によって、すなわち伊勢神宮の場合は神明造、出雲大社は大社造、住吉大社は住吉造など神社ごとにその形式が違い、個性が、というよりその土地の神としての性格を「外形」において現しているのではないでしょうか。
「外形」すなわちスタイルですね。かつて丹下健三先生が「美しいもののみが機能的である」といわれていましたが、強く美しい住宅を作って生きたいといつも考えています。朝鮮半島経由で日本にもたらされた宗教建築の中でも神社こそ世界のどこにも存在しない日本固有の建築といえます。実務的住宅作家として、日常の仕事から少し離れて時間を後戻りするのも良いですね。
Posted on 7月 17th, 2009 by admin
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